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ペインクリニックについて

                 牧港クリニック「痛みの治療センター」院長 平良 豊

             はじめに

 わが国にペインクリニックが誕生したのは
1962年のことで東京大学麻酔科外来(外来医長若杉文吉)として発足しました。現在では全国のほとんどの大学病院でペインクリニック科が開設されるに至っています。またペインクリニック専門の診療所も増加しています。日本ペインクリニック学会の認定医は全国で1358名(2004年)となっています。この間痛みの基礎科学が急速に進歩し、新しい痛みの治療法も開発されてきました。しかしながら日本でのペインクリニック誕生から40余年経た今でも、医師の間あるいは患者さんの間でもペインクリニックについて十分な理解が得られていないのが現状です。ここではペインクリニックについて以下の順でわかりやすく解説したいと思います。

 1.ペインクリニックとは
 2.ペインクリニックの対象となる疾患
 3.痛みとはなにか?
  1)痛みの定義
  2)痛みの種類
 4.痛みの検査法
 5.痛みの治療法
  
1)薬物療法
  
2)神経ブロック療法
    A.神経ブロック法(局所麻酔使用)
    B.神経ブロック法(神経破壊薬使用または高周波熱凝固法)
  
3)関節内注射
  
4)特殊検査
  
5)内視鏡手術
  6)脊髄刺激療法
  7) ボトックス注射
  8)硬膜外自家血パッチ


1.ペインクリニックとは
 ペインクリニック(Pain Clinic)を訳すると“痛みの診療所”となりますが、痛みはすべての診療科で取り扱うので、説明としては少し不十分な感があります。そこでペインクリニックをもう少し正確に説明してみたいと思います。

痛いのだからそこに痛みを起こす身体的な原因があるだろうと考えるのはごく自然で正しい発想です。だから患者さんはどこが痛いかによって、自分で診療科を選んで受診します。たとえば眼が痛ければ眼科に、鼻や耳の痛みは耳鼻科に、頭痛は脳外科に、手足や腰痛は整形外科に、腹痛は内科にという具合です。そこでは痛い所あるいはそれに関係しそうな所の検査を行います。異常がみつかればそれを治療します。痛みは通常それで治ります。しかし、「治ったはずなのにまだ痛みが続く」、あるいは「異常がないのに痛い」、しかも「その痛みは周りの人からは信じられないぐらい痛そうである」。こうなるとどうでしょう?患者さんだけでなく各科専門医の先生もきっと困ってしまうと思います。このようなときペインクリニックの専門性が発揮されることになります。

1980年代後半から痛みの基礎科学が急速な進歩を遂げました。以前から専門医のなかでは経験的に知られていた“痛みの悪循環”が電気生理学や薬理学の面から解明されるようになりました。研究では「唐辛子を皮膚に塗って風呂にはいると痛いのはなぜ?」「日焼けした皮膚を叩くととても痛いのはなぜ?」といった一見当たり前の日常の出来事を科学的に解明されています。また三叉神経痛や反射性交感神経性ジストロフィーと同じ様な症状をラットなどの小動物に起こさせて、その痛みを詳細に研究するようになっています。その中でわかったことは以下のことです。

末梢神経や脊髄神経は臓器や体表面から発生した痛みを脳に伝える働きを持っていますが、痛みを作り出したり、痛みを強くしたり弱くしたりする機能も持っている。

痛みが続くと、脊髄や脳で神経の機能異常が起き“痛みの悪循環”ができる。痛みが続くと痛みに慣れるのではなくかえって痛くなる。痛みが続くとその付近の血管が縮んで血行障害となりかえって痛くなる。

 痛みがさらに長引くと脊髄神経や脳細胞が痛みを記憶するネットワークをつくり痛み記憶が固定されます。こうなると痛みは永遠に続くことになります。

痛みが続くと痛みの悪循環から、精神的にも身体的にもいろいろな失調をきたします。まさに百害あって一利なしです。痛みをいたずらに長引かせてはいけません。

 ペインクリニックの専門医は痛みに対する基礎知識を持ち、痛みの診断に必要な臨床検査の技術を使って個々の痛みの診断をして、治療に結びつけることができます。
 もちろんすべての痛みを取り除くことができるわけではありません。どうしても取り除くことができない痛みの場合は、痛みを持ちながらも生活の質(Quality of Life:QOL)は維持して人生を送ることができるよう手助けをするのも、ペインクリニック専門医の重要な役目のひとつです。


2.ペインクリニックの対象となる疾患

ペインクリニックの対象なのか否かは疾患名で決まるのではありません。「痛みのため日常生活が妨げられ、痛みの緩和が急務である」「痛みの緩和が通常の鎮痛薬では不十分」のときです。たとえば「明日野球の試合があるが、走ると膝が痛いので止めて欲しい」といわれても、これはお断りするしかありません。この場合の痛みは必要な痛みであって、無理な運動をさせないための警告として重要な役割を持っています。むやみに麻酔剤やステロイド剤を使用して痛みを止めると後に弊害をもたらしかねません。ペインクリニックの対象となるのは①頭痛のためしばしば仕事を休んでしまいます②肩が痛くて、寝返りの度にズッキーンとして眼が覚めてしまいます。③口を動かすだけで鋭い痛みが起き、食事が十分にとれません。④わき腹に触れるだけで痛い、自分の下着がこすれるだけで痛い⑤寝ても起きても腰が痛い、苦しい痛みで、痛み止めが効かない。などのような場合です。

以下の疾患で、かつ上述したような要件をみたす場合にペインクリニックの対象となります。
1)頭痛(偏頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛、後頭神経痛、その他の頭痛):主に薬物療法ですが、薬剤抵抗性の場合は星状神経節ブロック、後頭神経ブロック、三神経ブロックになります。
2)顔面痛((三叉神経痛、舌咽神経痛、非定型顔面痛、顔面カウザルギー):星状神経節ブロック、三叉神経ブロック
3)頸肩上肢痛(頸肩腕症候群、外傷性頚部症候群、頚椎術後疼痛頚椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、神経根障害、胸郭出口症候群、肩関節周囲炎、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群):一般的に整形外科での治療が効かない場合、痛みが特に激しい場合に星状神経節ブロック、腕神経叢ブロック、神経根ブロック、肩甲上神経ブロックを行う。
4)胸背部痛(肋間神経痛、開胸術後カウザルギー、胸椎圧迫骨折)
5)腹痛(腹部手術後後遺症、特に重症な月経困難症)
6)腰下肢痛(腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、坐骨神経痛、腰椎圧迫骨折、幻肢痛):整形外科での消炎鎮痛薬や物理療法等が効かない、痛みの極端に強い例に硬膜外ブロック、神経根ブロック、椎間関節内注射が有効です。
7)肛門、外陰部痛(尾骨神経痛、肛門手術後遺症、心因性疼痛)
8)帯状疱疹後神経痛:発症初期は抗ウイルス薬の内服が優先だが、皮疹が乾燥化しても痛い場合は(発症から2週間後)一刻も早く神経ブロックを行うことが重要です。発症から1ヶ月を超えると治癒率が低下する。
9)複合性局所疼痛症候群:CRPS
(反射性交感神経性ジストロフィー):最も難治性で進行性の疾患のため初期は集中的神経ブロックを要する場合が多い。
10)中枢性疼痛(視床痛、脊髄損傷後疼痛、腕神経叢引き抜き損傷)
11)癌性疼痛:初期には消炎鎮痛薬が有効です。これが効果の弱いときは医療用麻薬を使用します。これでも不十分のときは神経破壊薬を使った神経ブロックを行ないます。
12)痛み以外の神経ブロック適応疾患(顔面神経麻痺、顔面痙攣、突発性難聴、メニエル症候群、鼻アレルギ-、網膜中心動脈閉塞症)星状神経節ブロックによる血流促進で効果を発現します。顔面痙攣はボツリヌス毒素注射または顔面神経ブロックで治療します。


3.痛みとは何か?=痛みの基礎知識=
 ペインクリニックを訪れる患者さまの大部分に共通していることがあります。それは診察室で問診が始まったときの「痛みのことを詳しく訊ねられた」「自分の痛みをわかってくれるかもしれない」という驚きと期待のまなざしです。裏を返せば、これまで痛みのことを訴えても軽視されたり、理解してもらえなかった体験をもっていることが少なからずあるということになります。これは医師の痛みに対する理解が不十分であること、痛みを他の五感と同様に単なる“感覚”としてとらえていることに起因していると思われます。そこで痛みの定義と種類について解説します。

1)痛みの定義

1986年に国際疼痛学会の用語委員会は“痛みは実際または潜在的な組織障害に関連して起こる、またはこのような言葉を使って述べられる感覚的および感情的な不快な体験”と定義しました。要約すると

実際的な組織障害(身体が傷つくとき)で起きる不快な体験。

潜在的組織障害(身体が傷つきそうなとき)でも起きる。
組織障害は起きてもいないが、あるいは潜在的な組織障害もないが、そのような言葉で言い表される不快な体験(たとえば割れてもないのに頭が割れるように痛いと表現することは良くあることです)。

痛みは感覚でもあり、感情でもある。

つまり検査をして異常がみつからなくても痛いのは痛いと認めるべきであるし、痛みは感情でもあるので、気分や周りの環境で大きく影響されるのも当然との理解が生まれてきます。


2)痛みの種類(発生の仕組みからの分類)

 痛みを発生の仕組みの面から分類すると3つに分類されます。


 第一の痛みは侵害受容性疼痛です。最も一般的に理解されている痛みで、外傷のため末梢神経に機械的外圧が加わったとき起きる痛みです。傷の度合いと痛みの強さが一致し、傷の治癒に伴って痛みも消えます。この痛みは以下のような重要な役割があります。①痛みの原因となるものから逃げるための反射的動きをおこす(例えば熱い鍋にふれるとアッチッチといって手を反射的に引っ込める動作を起こす)。②傷を固定させ治癒を促進する(例えば腕の骨折をしたあとに、もし痛みがないと腕をいつも動かしてしまい、折れた場所がいつまでもくっつかずに治りません。痛みがあると、動かすと痛いので動かせません。そのため骨はそのうちにくっついて治ります。)。③身体にとって危険な行為を学習させ負傷の繰り返しを防ぐ。

この第一の痛みは生きるためにとても大事な役割があり、もしそれがなくなった場合(日本には1家系に見つかっているようですが、先天性無痛覚症といって生まれつき痛みを感じないという人がいます)。年中傷が絶えず、骨折しやすく、骨折すると非常に治りにくいことになります。

 
 第二の痛みは神経原性疼痛(神経の働きがおかしくなったために起きる痛み)で、傷の度合いと痛みの強さがつりあいません、傷が治癒しても痛みだけが続きます。発生メカニズムは①発痛物質の蓄積、②末梢神経の変調(神経線維を痛みの情報が逆方向に伝わったり、神経の先端から痛みを起こす物質が分泌される)、③脊髄神経の変調(神経細胞が過敏になる、痛みを伝える神経が増える)などが関係しています。いわゆる痛みの悪循環によって痛みがひとり歩きを始めた状態です。痛みはどんどん悪化し、痛い範囲が拡大し、四肢の感覚の麻痺、運動機能障害、骨がもろくなり、関節の動きが悪くなります。この痛みは侵害受容性疼痛の時期と重なっていることもあり、急性期には見逃されがちです。通常の痛みよりも激しく傷の具合とつりあわないため、しばしば“痛がりだ”、あるいは“精神的なもの”とされ、そのため患者は主治医に不信感を持ち、関係が悪化していることが多いです。診断の要点は痛みの性質です。ひりひりとした火傷のような灼熱痛、触るだけで激しく痛む(アロディニア)などの症状、痛い場所の周囲の皮膚温の変化(例えば
50肩の時に手の皮膚温が低下または上昇する)があります。この痛みは慢性的に続くため心理状態にも影響し、不眠、食欲低下、便秘、憂うつな気分、怒りっぽいなどの症状を伴うことが多いです。前者の痛みが有益な役割を持っているのに対し、この痛みは有害なだけで、ひとつの益もありません。

 
 第三の痛みは心因性疼痛です。これには身体表現性疼痛障害やうつ病、不安障害、転換性障害による痛みです。神経原性疼痛と同時におきていることもあり、精神科や心療内科医とペインクリニック医の連携が必要です。心理テストや人格テストが診断の助けとなります。


4.痛みの検査法
 ペインクリニックでは一般的なレントゲン検査、CT検査、神経学的診察に加え、独特の痛みの検査法があるのでこれらを簡単に解説します。

痛みの問診は最も重要で、頭痛や顔面痛はほとんどこれだけで確度の高い診断ができます。問診では以下のようなことを聞きます。①痛みの性質(鋭い痛み、鈍い痛み、電撃的痛み、灼熱痛、アロディニア(皮膚にさわるだけで起こる痛み))、②持続(時間、周期)、③痛みを強くする因子(さわる刺激、熱刺激、冷たい刺激、光、音、ストレス)。⑤痛みの範囲を細かく聞きます。

痛みの強さはビジュアルアナログスケール(VAS: Visual Analoge Scale)(010cm)を使って表すか(図1)。

図1:ビジュアルアナログスケール(VAS: Visual Analoge Scale

また、ペインビジョンとよばれる装置を用いて「痛み度」の測定ができます(図2)。

図2:ペインビジョン

サーモグラフィーは皮膚の温度を赤外線カメラで測定して、交感神経の働きや、炎症があるかをしらべる検査です(図3)。

図3:サーモグラフィ

さまざまな薬物(フェントラミン、リドカイン、ケタミン、モルヒネ、チアミラール)を静脈から注射して鎮痛効果をしらべて、痛みの原因をさぐることもあります。
 心理人格テストは質問表に答えて、それを解析します。SDS(不安の度合いを調べます。)CMI(心身相関の尺度)、MMPI(多面的に人格や心理状態を調べます。)
 


5.痛みの治療法

1)薬物療法
非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID s)は慢性の痛みの患者様で長期に使用すると胃十二指腸潰瘍が危惧されます。やむを得ず長期に使用する場合は、COXⅡ阻害薬とよばれる鎮痛薬を使用すれば、副作用を減らすことができます。三環系抗うつ薬はペインクリニックでもっともよく使用される鎮痛補助薬です。帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経性ジストロフィーに有効です。抗けいれん薬は神経因性疼痛、中枢性疼痛(脊髄障害による痛み、脳内出血後の痛み)に有効です。

2)神経ブロック法
 ペインクリニックの基幹となる治療手段です。一時的な麻酔効果を期待するのではなく、痛みの治癒あるいは持続的な緩和を期待します。その中でも星状神経節ブロックは様々な疾患に有効で、血流障害で起きる疾患にも有効な治療法です。顔、頭、首、肩、腕、背中の痛みに効果を発揮します。またメニエル症候群、顔面神経麻痺、アレルギー性鼻炎、網膜中心動脈閉塞症、多汗症、腕の動脈閉塞症などの痛み以外の疾患にも効果があります。しかし、首に注射をするので、さまざまな危険性があります。専門医は精確な注射ができますし、もし仮に合併症が起きても適切な対処ができるので、安全に行なうことができます。またこの神経ブロックを行ったあとは、30分間安静にし、バイタルサイン(血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度)をチェックしてから帰宅します。

次によく行われるものは硬膜外ブロックです。身体の殆どすべての痛みに有効ですが、特に帯状疱疹後神経痛や腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアの治療に有効です。この場合は少量の副腎皮質ホルモンと局所麻酔薬を併用します。時に12回の神経ブロックで劇的な効果を発揮するので、慢性の腰痛であってもまた手術が必要と思われる場合でも試みるべきです。帯状疱疹後神経痛に対しては入院して持続硬膜外ブロックを行うのが一般的です。合併症として血圧が低下する場合があるので、ブロック後は1時間の安静とバイタルサインの監視が必要です。

その他保険適応されている神経ブロックは46件ありますが、それらを適宜応用して痛み治療にあたっています。


A.神経ブロック法(局所麻酔使用)
●星状神経節ブロック:首にある交感神経節に局所麻酔薬を注入し、交感神経を一時的に麻痺させます。その結果、頭部、上肢、上胸部の血流を増加させます。また、痛みを減弱させます。また、内分泌系、免疫系にもよい作用があることが示唆されています。以下の疾患の治療に用いられます。【適応疾患】(難治性頭痛、帯状疱疹後神経痛、非定型顔面痛、外傷 性頚部症候群、頚椎症による頚部、上肢の痛み、アレルギー性鼻炎、メニエル症候群、顔面神経麻痺、網膜動脈閉塞症、バージャー病、閉塞性動脈硬化症、多汗症)
●三叉神経ブロック(眼窩上神経ブロック、眼窩下神経ブロック、おとがい神経ブロック、上顎神経ブロック、下顎神経ブロック、半月神経節ブロック)【適応疾患】 三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、群発頭痛
●後頭神経ブロック:【適応疾患】後頭神経痛
●肩甲上神経ブロック:【適応疾患】肩関節周囲炎(50肩)、頚肩腕症候群
●腕神経叢ブロック:【適応疾患】頚椎症性神経根症、帯状疱疹後神経 痛、頚肩腕症候群、複合性局所疼痛症候群
●肋間神経ブロック:【適応疾患】肋間神経痛、帯状疱疹後神経痛、開胸手術後疼痛

硬膜外ブロック(胸部・頚部、腰部、仙骨部):背骨は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎1個がつらなってできています。その背骨の中を脊柱管というトンネルがあり、その中を脊髄神経が通っています 。脊髄は脳脊髄液で満たされた硬膜という袋の中に入っています。脊柱管内で硬膜の外側のスペースを硬膜外腔(こうまくがいくう)といいます。ここに局所麻酔薬を注入するのが硬膜外ブロックです。【適応疾患】帯状疱疹後神経痛、頚椎椎間板ヘルニア、複合性局所疼痛症候群、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、坐骨神経痛
持続硬膜外ブロック:硬膜外腔に直径1mm程度のポリウレタン制のチューブを挿入し、そのチューブから連続的に局所麻酔薬を注入する方法です。入院が必要です。【適応疾患】帯状疱疹後神経痛、癌の痛み、複合性局所疼痛症候群
●大腿神経ブロック:【適応疾患】大腿部の痛み
●坐骨神経ブロック:【適応疾患】坐骨神経痛
●神経根ブロック:【適応疾患】腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、神経根
●トリガーポイント注射:【適応疾患】頚肩腕症候群、筋筋膜性疼痛、線維筋痛症

B.神経ブロック法(神経破壊薬使用または高周波熱凝固法)
 神経にエタノールあるいはフェノールグリセリンを注入すると神経が破壊され、その神経の支配する部分が麻痺します。この麻痺は神経がゆっくり伸びて再生するまで(1年から10年)つづきます。その間痛みが止まります。この方法は身体の一部の感覚が麻痺するので、他の方法ではどうしても痛みが取れない場合にのみ行います。

 三叉神経ブロック(眼窩上神経ブロック、眼窩下神経ブロック、おとがい神経ブロック、上顎神経ブロック、下顎神経ブロック、半月神経節ブロック):

【適応疾患】三叉神経痛、癌による顔面の痛みの除去

 胸部交感神経節ブロック:【適応疾患】複合性局所疼痛症候群、バージャー病、多汗症

腰部交感神経節ブロック:【適応疾患】複合性局所疼痛症候群、バージャー病、多汗症

 腹腔神経叢ブロック:【適応疾患】癌のための上腹部痛、慢性膵炎

くも膜下脊髄神経ブロック:【適応疾患】癌の痛み


3)関節内注射

肩関節内注射:ヒアルロン酸または局所麻酔薬と副腎皮質ホルモンを関節に注射します。使用薬は病状にあわせて使い分けます。

【適応疾患】肩関節周囲炎(50肩)、変形性肩関節症

股関節内注射:消炎鎮痛薬が効かないような股関節の強い痛みのときに行ないます。股関節内に局所麻酔薬と副腎皮質ホルモンを注入します。週に1回で4-5回行います。【適応疾患】変形性股関節症、股関節炎

膝関節内注射:ヒアルロン酸を関節内に注入します。週に1回、計5回行います。

【適応疾患】変形性膝関節症

 椎間関節内注射:いわゆる「ぎっくり腰」のときに劇的な効果があります。

【適応疾患】椎間関節性腰痛症


4)特殊検査

椎間板造影:椎間板の中に造影剤を注入し、X線写真、CT写真を撮って、造影剤の広臥位を写します。腰椎椎間板ヘルニア、頚椎椎間板ヘルニアのときに脱出した髄核がどこにあるか、神経の圧迫があるか、痛みの原因となっているかなどがわかります。

仙骨部硬膜外造影:仙骨裂孔(尾骨の付け根あたり)から針を刺して、硬膜外腔に造影剤を注入します。造影剤の広がり具合をX線写真、CT写真で写しだします。硬膜外腔の癒着、神経が圧迫される様子、椎間板の突出の具合がわかります。

脊髄腔造影:腰の中央から注射をして硬膜の内側の脳脊髄液の入っている部分に造影剤を注入します。硬膜外腔の癒着、神経が圧迫される様子、椎間板の突出の具合がわかります。また低髄液圧症候群の場合は髄液が漏れる部位を見つけることができる場合があります。
神経根造影:脊髄から枝分かれし、脊柱管から出てくる神経(神経根)に直接注射をして造影剤を注入します。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症のときに神経根の圧迫があるかどうか診断するために行ないます。また造影剤を注入したあとに局所麻酔薬と副腎皮質ホルモンを注入しますので、痛みが劇的に緩和する場合があります。


5)内視鏡手術

 わが国には2000年頃から導入された方法で、沖縄県では20029月から私がこの方法を導入しこれまで100例余の治療を行いました。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎の手術後の坐骨神経痛などの難治性の腰痛下肢痛の治療法です。仙骨裂孔から脊柱管内に内視鏡を挿入し、第2腰椎レベルまでの硬膜外腔を観察します。さらに硬膜や神経根の癒着を剥離して慢性の腰下肢痛を切らずに治療できる画期的方法です。硬膜外ブロックを行っても効果のない場合や、腰椎手術後に再発した場合の様な治療困難例に対して目をみはるような効果を挙げています。最近先進医療に指定されていますが、まだ健康保険が適応されていません。(図4

図4硬膜外内視鏡下神経剥離術

5)脊髄刺激療法
 脊髄後柱を直流電流で刺激して鎮痛をはかる方法です。神経ブロックや手術療法が無効の慢性痛の場合に行います。刺激電極は硬膜外ブロックと同様な手技で挿入できます。刺激発生装置は操作しやすい胸部または腹部の皮下に植え込み、対外からリモコンスイッチで
on/offと刺激強度の調節ができます。保険適応です(図5)。この手術は診療所では行なえず、病院で行なうきまりになっています。当院医師が施設基準の病院に出張して行うことができます。

図5:刺激発生措置及び刺激電極

6)ボトックス注射

片側顔面けいれん、眼瞼けいれん、頚性斜頚の治療としてボツリヌス菌毒素の注射を行ないます。これにより3ヶ月間程度けいれんが止まり、症状が緩和します。保険適応です。

当院では美容目的のしわ取り(保険適応外)のための注射は行なっていません。


7)硬膜外自家血パッチ

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)は“頭痛”“首の痛”“めまい” “耳鳴り” “倦怠感” “疲れやすい”“目のかすみ”などの多彩な症状をきたす疾患です。この治療として硬膜外腔に本人から採血された血液を10ml程度注入する方法です。

いろいろな治療をしてよくならないケースでも劇的な効果がありますが、現在のところ、この方法は保険適応されていません、自費での治療になります。


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